top of page

鍵は解体範囲 性能改修って、いくらかかる?




改修費用の算出

性能改修で一番頭を悩ませるのは、解体範囲です。

耐震改修や断熱改修は壁の中をいじる工事なので、壁を剥がしたり壊したりする作業がでてきます。でも、それだけではなく、当然、補強をしたあと、再度壁を作り直す必要もあります。さらに、壊すだけでなく、壊した壁の廃材を捨てるという作業も発生します。近年では、産業廃棄物処理費用も値上がりしています。また、建物まるごと重機で解体する工事と違い、改修の解体は、改修範囲外を傷つけないよう、手作業で丁寧に行う必要があります。建物から廃材を運び出す作業も手作業で、割高な人件費がかかります。

壁だけのコストで考えると新築は「つくる」の1作業のところ性能改修工事は壁を「丁寧に壊す」、「手作業で捨てる」、「性能補強する」、「作る」の4つの作業が必要です。作業面積あたりのコストは当然数倍割高になります。


解体範囲を抑える性能改修

とはいっても改修とは、既存のまま使える部分を活用することですから、全体としては新築より安くなるようになるようコストコントロールすることがほとんどです。

コストを抑えるためには、当然、壊して作り直す解体範囲を小さくしていくことが必要です。

さらに、解体範囲を減らしながらも、いかに性能を向上させていくかを計画するかが改修のコストコントロールの肝となります。

解体範囲を抑えて性能改修する方法はいくつか考えられています。


1.外張り工法

既存の外装材はそのまま残したまま、既存外装材の上に断熱材を足す。基本的に外装材全面に実施する。柱の上下(基礎周り、階間)は外装材を帯状に剥がし、簡易的な構造補強(柱頭柱脚金物の代替補強)を行う。その際に気流止め設置も行う。

内窓設置・交換等による開口部断熱補強

メリット 

  • 既存の外装材解体が不要。

  • 内部工事が不要。

  • 外装材の更新と合わせて行うと効率的。

デメリット 

  • 壁を解体しないので、壁内部の劣化に気づかない場合がある。

  • 内部の構造状態が不明のため、外張りする新しい断熱材、外装材の固定が確実に行われているか判断するのが難しい。


2.内部気流止め、断熱補強工事

内部の外壁、天井を解体して断熱補強、気流止め補強工事を行う。外壁はいじらない。内窓設置・交換等による開口部断熱補強

メリット 

  • 大掛かりな外装工事、足場が不要。内装リフォームを希望している場合、合わせて合わせて行うと効率的に工事できる。

  • 一部屋、一階だけなど部分的な工事も可能で規模の調整がしやすい。

  • 内部からの耐震壁の新設、柱頭柱脚金物設置も可能。

デメリット 

  • 断熱層の厚さを増やす工事は難しいため断熱性能の上げ幅が限定的。

  • 床や天井周りなど、断熱補強が切れる箇所がでてくる。

  • 外部をいじらないため、外装材の更新と合わせて行うことはできない。


改修の総額はいくらかかるの?

上記の「解体範囲を抑える改修」は解体量を抑えることで、性能向上、デザイン向上が限定されるデメリットがあります。

しかし大抵の場合、上記の2パターンにお客様の希望がピッタリ一致することはありません。外部からの性能改修をしつつも、ついでに内部の間取りの変更や設備更新もしたいから、結局内部も外部も工事することになったなど、性能改修+αで改修範囲は膨れ上がるのが普通です。

費用は千差万別です。200万円以下の一部屋断熱耐震改修も可能ですが、性能改修に加えて設備や内装リフォームも合わせると、改修総額は新築価格の7割を超えるなど、様々な規模が考えられます。


総額は高いがコスパはいいスケルトン改修

改修範囲を絞ればコストは抑えられるのですが、その分、改修効果が限定的になり、細かな作業が必要で面積あたりの工事費用が割高になります。

逆に、いっそのこと建物を構造体のみ残して作り直すという大規模改修を選択するのも一手です。これを仮にスケルトン改修と呼びます。

スケルトン改修は、主要構造部を改変するため新築同様、確認申請が必要な規模になることが多いと思います。ですが、外装から断熱材、屋根まで、ほどんど新築と同等の性能の建物を作り直すことができます。

基礎、柱梁といった構造体のみを再利用し、その他は新築するといったイメージです。解体も、骨組みのみを残しすべて取り外すので、多少雑といいますか、効率的に進められます。解体後、構造体がすべて露わになりますので、劣化部分はしっかりと補強補修を行うことができます。大きく解体してしまうので、総額は高くなりますが、作業効率や得られる性能やデサインを考えるとコストパフォーマンスは部分改修よりも高くなるでしょう。


スケルトン改修の総額は?

スケルトン改修ですと、新築より1~2割割安に作ることを目標に設計できれば良いと思っています。中古住宅ですと、古家の価格はほぼなく、販売価格はほぼ土地代であることもあります。古家付ですと解体費用として販売価格が値引きされていること(あるいは交渉で値引きできること)もありますので、値引き分をスケルトン解体費用に回すこともできます。構造体の状態がよければ新築に対抗する選択肢の一つではないかと思います。

 

部分改修とスケルトン改修。2つの改修方法の使い分け

部分改修は、建物をそのまま使いたい(使える)範囲が多いと思う人におすすめです。極力改修コストを抑えたい人にも向いています。間取りや内装が気に入っていてそのまま残したいという積極的な理由の方にもおすすめです。

スケルトン改修は、新築同等性能、デザインの建物を割安に作りたいという方におすすめです。スケルトン改修は、間取りや規模の制限はありますが、費用的にも自由度、性能的にも新築を建てる感覚に近いのではないかと思います。


改修方法や範囲は建物の状況や住まい手の希望、費用を照らし合わせながら丁寧に方針を決めていくことが必要です。物件の状態によって、改修内容が大きく変わりますので、物件を取得して改修を希望する場合は取得前から設計者にご相談いただくことをおすすめします。


bottom of page